劇団四季「ウィキッド」感想

おすすめの座席は2階席最前列センター

ウィキッドは舞台セットと照明が華やかで、ステージの上のほうにまでセットが取り付けてある。2階席からだとセットのすべてが視界に入り、特にエメラルドシティの場面では電飾が色鮮やかに広がっている景色が楽しめると思う。天井にいるドラゴンも2階席から見ると目の前なので迫力がある（ドラゴンを動かしている裏方さんまで観察できる）。そしてなんといってもこのミュージカルのいちばんの見せどころ、一幕のラスト「Defying Gravity」ではエルファバが目の前で歌ってくれる。目が合う距離だ。ということで、迫力を求めるのであれば2階席最前列、役者さんの表情を見たい場合には1階席がおすすめ。ただ、最前列は2階のせり出している部分（手すりなど）が視界に入ってしまうので、気になる方は2列目のほうが良いかもしれない。両サイドの席はセットの設計上、セットと役者さんが被ってしまって残念なことになるので注意。2階席は遠いんじゃないの？と私も思ったが、小さな劇場なのでステージとの距離は思っていたよりも近かった。

オリジナルと比べてしまうと四季は劣化版？

ストーリーや舞台セットは本場ブロードウェイ仕込みで映像を見る限りではそのままだ。しかし、もともとオリジナルブロードウェイキャストのサントラが好きで毎日のように聞いて期待していただけに、四季版の日本語訳された歌を聞いてちょっとがっかりしてしまった。原曲の歌詞と日本語版歌詞を見比べると原曲崩壊レベルである。違和感で頭がいっぱいになってしまい、後味の悪い気持ちを抱えながら終演を迎えてしまった。ウィキッドの楽曲は作詞作曲ともにスティーヴン・シュワルツが担当しているため、曲に違和感なく歌詞が載っている。劇団四季に限らず、ディズニーミュージカルなども翻訳して更に曲に合わせるとなると相当な力量が問われるのではないかと思う。致命的だったのは、エルファバとグリンダが親友に見えなかったことだ。昨日までエルファバの悪口を山ほど言っていたのに「親友になりましょ♡」なんて都合の良い展開になるのはやはり現実的にはありえないような。まあそんなことを言ってしまったらマンマ・ミーアなんて父親候補が3人いる時点でお母ちゃんどんだけビッチやねんという話になりますが。。そんなこんなで、いろいろとググって調べてみたところ、ブロードウェイ版ではどうやら仲良さそうにしているのがよく伝わってくるらしく、これもまた日本語訳がちょっと足りていないのではないかと思うのであります。グチグチと言ってしまったが、出演しているキャストの皆さんたちは安定感のある歌と演技で迫力があり、アンサンブルに至ってはブロードウェイ版と同じかそれ以上のレベルの歌唱力で申し分ない。それだけにもっと上手く訳されていれば……と勿体無く思ってしまったのだった。改めて、オリジナル・ブロードウェイ・キャストのエルファバ、グリンダはやはりハマリ役。本場の舞台を観ていたらどんなに素晴らしいことであったか！クリスティン・チェナウスは天真爛漫なぶりっこちゃん、イディナ・メンゼルは声量のあるソウルフルな歌声……うん、ぴったりだ。イディナ・メンゼルはアカデミー賞長編アニメーション賞・主題歌賞をダブル受賞した「アナと雪の女王」の主題歌を担当し、話題になっていますね。松たか子さんバージョンだけでなくイディナ・メンゼルバージョンもぜひ。 

それでも素晴らしいミュージカルなことには変わりない

華やかな舞台セットと演出で受け入れられやすい作品でありながら、差別や偏見という重いテーマを取り扱うメッセージ性に心を打たれる人は多いのではないだろうか。笑いあり感動ありのストーリーでリピーターが多いのも頷ける。ブロードウェイ版を見るのがいちばん良いのだろうが、NYまで行くのは難しい。日本でウィキッドを上演できる実力があるのは四季だけだと思うので、四季なりのウィキッドを受け入れ、楽しむのがいちばんだ。観劇する際にはぜひ映画なり本なりで「オズの魔法使い」を見ておくことをおすすめする（ミュージカル内でドロシーやブリキ男、かかしなど、おなじみのキャラクターも登場するため）。私も1年後くらいにまた観に行きたい。

Wicked

ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版