Hello-Goodbye

地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子

【ネタバレ注意】「ファニー・ガール」感想ーーコケティッシュな大スターとギャンブラーの恋

バーブラ・ストライサンドアカデミー賞主演女優賞を受賞した「ファニー・ガール」を観た。もともとバーブラがブロードウェイで主演していたミュージカルを映画化した作品である。

ファニー・ガール [DVD]
 

 AmazonでDVDもしくはBlu-rayを購入するとAmazonインスタントビデオの200円OFFクーポンが貰えるので、それを使ってみた。高画質版ではないから画質にこだわる人にはあまりおすすめできないかも。

 

ブロードウェイの伝説の喜劇女優、ファニー・ブライスが主人公。ファニー・ブライスは実在の人物であるが、無名の女優が初めての舞台で拍手喝采を浴びる様はまさにバーブラ・ストライサンドのデビューそのもの。ステージセットの綺羅びやかさはなんだか「華麗なるギャツビー」を思い出す。すべての仕事をすっぽかし、愛する彼に会いに行くシーンで歌われる「Don't Rain On My Parade」は歌唱力もロケーションも文句なしの名シーンである。ニューヨークのハドソン川で空撮されているのがまた良い。

 

愛しているのに別れなければならない悲しみを歌っているラストの「My Man」もこれまた名曲。バーブラのコンサートで歌われることも多いが、映画版「My Man」がいちばん迫力があると思う。

 

バーブラも主人公のファニーと同じくユダヤ系。相手役のニックは「アラビアのロレンス」などでもおなじみのエジプト人、オマー・シャリフユダヤとアラブの組み合わせで不思議な感覚だが、バーブラの存在感が際立ちすぎてあまり気にならない。喜劇女優なだけあってお茶目でキュートな演技と胸元がバーンと出たセクシーなドレスに身を包んだバーブラに心ときめく。

 

ファニーの夫となるニックがダメ男なものだから少々イライラさせられた。ニックの登場シーンから「この男、なんか胡散臭いわ......」と思っていたらやっぱりそうだった。ファニーとの初めての食事でまさかのベッド付き個室を取ってしまうほどの下心満載っぷり。

食事はいいけど デザートには誰がなるの?

ファニーの台詞にも「あらら〜」という感じ。嫌がってたのに流されちゃってるじゃないですかー。 ニックはファニーとの結婚後もギャンブルで負けて借金が増すばかり。それでもギャンブルを止められずに大事な妻の初日のステージをもすっぽかす始末。もはや病気。

「初日よりポーカーが大事なのね!」

「初日が何だ 僕にはポーカーが大事なんだ!」

初日が何だ、とまで宣うとは......。仕事で来れないならまだしもカジノに入り浸っているわけです。私だったらブチ切れるところですがファニーは誰よりもこのギャンブラー男を愛しているので結局許してしまう。こうやってイイ女はダメ男にほだされるわけだ。挙句の果てには横領で刑事事件を起こしてしまい、刑務所へ。前々から大スターの妻とギャンブラー夫ということで格差を感じていたニックは投獄前に離婚を申し出るが、ファニーは出所まで保留することを伝える。しかし出所後に「別れましょう」と切り出したのはファニーだった。ニックはもうファニーを愛していない。このまま彼から離婚を切り出されるのは彼女にとってつらいことだったにちがいない。ならば、言われるより自分で言ったほうがいいと思ったのかもしれない。今でもニックを愛しているからこそ、自分から言ってしまえば彼を悪者にしないで済む。

「さようなら」とファニーが口にしても、見送る瞳は未だニックを捉えたまま。その後ファニーが歌うのが「My Man」である。涙を流しながらの歌唱はこちらまで泣けてきてしまう。

For whatever my man is, I am his forever more

「彼がどんな男でも、私は永遠に彼のもの」。こんなことをファニーに言わせるなんてニックはなんて罪な男なんだろうか。

 

オマー・シャリフも歌うシーンがあるが、全編を通してバーブラがひとりで歌い切っている。2時間30分という長尺物で飽きるかと思っていたものの、ストーリーがうまく出来ていて引き込まれてしまう。スターとしての華やかな顔とは裏腹に夫との関係が悪化していく落差を演じ切ったバーブラの演技力も言うことなし。再生してから最初の5分ほどはなぜか画面真っ暗で音楽が流れたままなのが欠点だが、バーブラファンなら一度は観ておきたい名作であった。