Hello-Goodbye

地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子

【ネタバレ注意】「永遠の0」を観てきた

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涙と鼻水が止まらない。観終わってから時間が経った後もじわりじわりと頭の中で映画のシーンが思い浮かぶ、そんな映画だった。

 

司法浪人ニートの健太郎は姉と共に亡くなった祖父・宮部久蔵の過去を調査することになる。宮部は凄腕パイロットであったが周囲からは「海軍一の臆病者」と揶揄されていた。特攻隊の生き残りの人々を訪ねて回るうちに祖父の本当の人物像が浮かび上がってくる。現代と過去の物語が行き交う巧みな構成だ。

 

迫力のあるCG映像も素晴らしいが、何より良かったのは岡田くんの芝居だった。岡田くん演じる宮部久蔵は、あの時代ではタブーであったにも関わらず家族を愛し、生きて帰ることを何よりも大切にしていた。しかしそんな男がなぜ特攻に志願したのか?その謎が次第に明らかになっていく。謎が明らかになる過程で、宮部の心の移り変わりが岡田くんの名演技で表現されている。特攻隊員として教え子を送り出さなくてはいけない現実。隊員たちはみな死んでいく。そんな失望感が人が変わったようなやつれた表情で壁に寄りかかるシーンで演じられており、ぐさりと来た。そして最後、特攻として零戦に乗って米艦に突っ込むときの「晴れやかな」表情。その目は何の揺らぎも無く美しい。見事だった。今思い出しても涙が出そうだ。

 

人に優しく、高潔な宮部の人柄はまさに岡田くんそのものであるようにも思える。女性ファンには不評のようだが、坊主頭も似合っていた(濃い顔がもっと濃く見えてしまうのは仕方ない)。 図書館戦争のときと同じく「教官」であることにもニヤリ。部下の濱田岳さんやKAT-TUN上田竜也さん、染谷将太さんの演技も良かった。特に濱田岳さんは「軍師官兵衛」で岡田くんと再び共演しており、今年は両者ともに大活躍の一年になりそうだ。

 

気になるのが「永遠の0」というタイトル。原作本でもその答えは書かれていないそうで、推測するしかない。宮部は特攻へ向かう際に染谷将太さん演じる教え子の大石に自分が乗る零戦を譲る。その零戦のエンジンの調子が悪いことを宮部は見抜いており、それに乗れば生き残れる可能性があった。操縦席に「妻と子どもを頼む」という書き置きを残し、宮部は戦死。大石は生き残ることとなった。誰よりも生き残ることをいちばんに考えてきた宮部がなぜ「生き残りのクジ」を譲ったのか?大石は前の戦闘で自分の命を救ってくれた人物だ。教え子たちが死んでいく姿を見て後悔していた宮部は、戦争という特殊な状況に置かれていたこともあり、命を救ってくれた部下に譲る以外の選択肢が無かったのだと思う。自分が生き残ることを選べばそれこそ「臆病者」になってしまう。そして宮部は特攻することによって「永遠の0(=無)」の世界へと旅立っていったのではないだろうか。宮部はすべてのものから解放され、妻に言った最後の言葉(「たとえ死んでも、それでも僕は戻ってくる。生まれ変わってでも、必ず君のもとに戻ってくる」)の通りになる。宮部が「永遠の0」になったことで妻や子、子孫たちに平和がもたらされたのだ。

 

その他に「零戦の技術力は永遠」という意味もあるのでは、と考えたものの、そうすると零戦の設計者・堀越二郎の目線になってしまうし、こじつけかなと。正解は分かりません。

 

608ページもの長編を映画にしているわけだから原作を読んでいないと理解に苦しむ点はあったものの、戦闘シーンはやはり迫力がある。艦これをやっているせいで赤城が撃ち落とされるシーンは無駄に感情移入してしまった。原作本も読んでみたい。宮部さん、あなたたちのおかげで日本は平和で豊かな国になっていますよ。あんさんは男の中の男やで......。